鞍と馬の健康

先日、オランダからサドルフィッターを招聘してフィッティングツアーを行いました。

前回は2020年1月。
その後すぐにコロナで渡航規制となり、実に3年ぶりのフィッティングでした。

今回は6日間の日程でしたが、約50名の方にフィッティングのご依頼をいただきました。

ライダーと馬の運動を見て
鞍のどの部分をどうしたら馬がもっと楽に動けるか判断して
その場で調整するのがフィッターの役割です。

フィッティング前後で乗りやすさが変わるのは、馬が楽に動けているから。

馬の背中も、人の頭と同様に、とても繊細です。

私たちも、ヘルメットがきつくて締め付け感があったり、歯が痛かったりする時は
体のどこかに緊張が出てしまいますよね。

馬が楽に動けていると、馬はライダーの騎乗に対してポジティブになるので
人も馬もハッピーに運動できます。
背を伸び伸びと柔らかく使えるようになります。

きちんと調整された鞍に乗った時のライダーの驚いた顔と感動した様子。
そして、背の負担が軽減されて、自由に動けるようになった馬の嬉しそうな様子。

馬がガラッと変わる瞬間は、本当に魔法の様です。

でも、残念ながら、どんな鞍にも魔法が効くわけではありません。

鞍には大きく分けてタイプが3つあります。

タイプ1.中が羊毛(または綿・人工羊毛・)で調整可能なもの
タイプ2.中は羊毛だが、モノフラップ(1枚あおり)で鞍を半分解体しないと調整できないもの
タイプ3.中はスポンジ素材で調整が一切不可のもの

フィッターが調整が出来るのは、タイプ1だけです。

中がスポンジ素材の鞍は、生憎、馬に合わせた調整は出来ません。

使い捨ての時代の今、販売されている鞍の85%はタイプ3です。
そして有名ライダーが広告塔を務めて営業しているのは殆どこのタイプ。

調整が出来ない鞍なのに、どうして有名ライダーが広告塔を務めるのかというと…
・定期的に新しい鞍を提供してもらえるので、常にへたっていない状態で乗ることができる
・さらに、広告塔といえども、トレーニングや競技でその鞍に騎乗しているわけではない

実際、2023年の春、ヨーロッパのCDIで
競技も終わった表彰式直前の待機馬場で、超有名ライダーが広告塔を務めるメーカーが
恭しく鞍を運んできて、乗せ換えている姿を目撃。
お互い、そこは割り切っているんだな、と知りました。

フィッティングツアーでは、
タイプ2や3の様に、その場で調整が出来ない鞍の場合も
どういった装鞍をしたらよいかをアドバイスさせて頂いています。
そして、それだけで劇的に乗りやすさと馬の動きは変化します。

洗い場にあるタオルを2つ折りにした、とか
お持ちのハーフパッドから一番良いものを選んで装鞍した、とか
そんな驚くくらいシンプルなことです。

馬が装鞍時に嫌がるそぶりを見せるのには必ず理由があります。
その様子を、ただの馬の癖だと、見逃さないでください。
痛いよー、苦しいよー!と訴えている馬の背に乗って
ライダーである自分だけが運動を楽しんでいるとしたら
それは虚しいですよね。
人馬で行うスポーツが乗馬であり馬術ですから
一緒に運動時間を楽しむためにも、
鞍が馬に合っているのか気にしていきましょう。

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